給与の差押えと破産・個人再生

債務整理受任時に、債権者から給与が差し押さえられている場合があります。
破産や個人再生を予定しているのであれば、給与を差押えから解放するために、とにかく早く申立てて開始決定を得る必要があります。

以下、それぞれの手続で給与の差押えがどのようになるかを見てみます。

破産管財手続の場合は、開始決定によって差押えは失効します(破産法42条2項本文。「破産管財実践マニュアル」82頁)。
それ以後の給与については、破産者が全額を受け取ることができます。

これに対して、同じ破産でも同時廃止の場合は、開始決定時には差押えは中止となるだけで(同法249条1項)、失効するのは免責決定確定した時です(同条2項)。

このため、開始決定がでれば、差し押さえられている給与の部分について、差押債権者が勤務先から回収することはできなくなりますが、破産者がすぐに差押相当額を受け取れるわけではなく、勤務先がプールし続けることになります。
そして、免責決定が確定した時点で、破産者は勤務先からプールされていた部分を受け取ることができるようになり、以後は差押えがない状態に戻って給与全額を受け取れます。
これは、開始決定によって生じた失効の効力が同時に消滅するので、結局、開始決定だけでは差押えが効力を失わないからです。
このため、旧法下では、同時廃止から免責決定の確定までの間の強制執行が許されるとされていました(最判平成2年3月20日最高裁判所民事判例集44巻2号416頁)。
破産法249条1項は、このような不都合を回避するために設けられた規定です。

次に、個人再生の場合ですが、これも同時廃止と同じような推移をたどります。
まず、開始決定で差押えは中止となり(民事再生法39条1項)、再生計画認可決定確定失効します(同法184条)。

つまり、開始決定がでても、(あとでまとめてもらえるとはいえ)認可決定の確定までは給与全額を受け取れないということですね。
ただし、給与全額の支払いがなければ再生に支障を来す場合は、裁判所に申し立てることで、強制執行の取消しも可能です(同法39条2項)。無担保で発令されることが通常のようです。

なお、破産、個人再生とも、申立後開始決定前の中止命令の制度があります(破産法24条1項1号、民事再生法31条1項)。

特に個人再生では、申し立ててから開始決定までに時間がかかることもありますので、これらの申立てをしたくなるところですが、むしろ裁判所に早期の開始決定を促す方が実用的でしょう。
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