個人再生に対する誤解

個人再生でよく誤解されるのが、サラリーマンは給与所得を得ているから、給与所得者等再生しか使うことができず、小規模個人再生は利用できない、というものがあります。
しかし、これは誤解で、いずれの手続も選択できます(「一問一答個人再生手続」(商事法務)40頁)。
ネーミングによって誤解が生じている面も大きいのですが、 特に制度導入当初は、再生債権者から消極同意が得られるか不明であったこともあいまって、給与所得者等再生の利用率が高かったものです。

しかし、その後、ほとんどの再生債権者が再生計画案に反対しないという実績が積み重なったことから、小規模個人再生の利用率が高まっています。
大阪地裁、東京地裁ともに約9割が小規模個人再生です。
給与所得者等再生では、最低弁済額の基準の1つに可処分所得基準が加わりますが、生活保護の基準を参考にしています。このため、どうしても最低弁済額が跳ね上がる傾向にあります。このため、再生債務者にとっては、小規模個人再生の方が経済的には有利なので、消極同意が得られるのであれば、そちらを選択することになります。

次に、個人が利用できるのは個人再生だけで、通常再生は利用できない、という誤解があります。
しかし、個人であっても通常再生の利用は可能です(前掲38頁、40頁)。
5000万円要件を満たさない場合や、再生計画案で5年を超える弁済期間を定めたい場合に、通常再生を利用するメリットがあります。
ただし、再生計画案に対する消極同意ではなく積極同意が必要となることや、債権調査などの手続が簡略化されないこと、監督委員の費用が必要となることなどに注意が必要です。

また、破産の申立てをしたところ、将来の収入から返せるのだから、破産ではなく個人再生を選択すべきだという示唆を、裁判所から受けることがあります。
しかし、これは全くの誤解で、現行法は、破産と個人再生について自由選択制を取っています(前掲46頁)。
支払不能に陥っていれば、将来の収入があるからといって、破産の利用が妨げられることはありません。

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