新破産法の基本構造と実務

一問一答の他に破産法でお薦めしたい本がジュリストの増刊号である「新破産法の基本構造と実務」という本です。ジュリストで連載していた記事をまとめたものです。
出席者(発言者)が超一流の学者の先生と超一流の実務家であり、参考になる発言が随所にあります。

私が読んでいて一番感銘を受けたのは松下淳一教授の直前現金化の話で(492頁以下)「99万円までの現金が自由財産とされたのは、先ほど述べたアメリカの法律のように、現金以外の財産の属性と上限額を組み合わせる規律あるいはワイルドカードの規律を設けることが日本法では困難だからということで、破産財団からの除外を上限額で画することが容易な現金を、日常的に保持する額よりも相当多めの上限額で自由財産にしたと考えられます。したがって、債務者によって財産が換価され、その代金が99万円の範囲内で自由財産となってしまうという事態を、自然人の債権者は覚悟すべきであって、換価前の財産の交換価値も、潜在的には換価行為を通じて破産財団から外れる可能性を有していたいと考えられないでしょうか。」という発言です。
現在のほとんどの裁判所では自由財産の拡張の判断において、直前に現金化されたものはその換価前の財産の性質に基づいて判断されるので、それが拡張適格財産で無い場合は99万円の枠内であっても自由財産の拡張が原則として認められないことになります(必要不可欠性が求められる)。

松下教授は99万円の枠内では破産者に財産のプランニングと認めるべきだと主張されていますが、私は個人的には松下教授の意見に賛成です。
裁判所には運用を改めて欲しいのですが、牙城はかたそうです。
でも、諦めずに主張していこうと思っています。

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