財団から放棄された不動産の滞納管理費

管財事件では不動産の任意売却に努めますが、いろいろな事情により売却できず、最終的に財団から放棄することがあります。

この場合、不動産の管理処分権は、破産者に復帰します。
そして、抵当権者は、破産者を相手方として競売手続を行います(自然人であれば破産者本人が相手方。法人であれば特別代理人を選任。)。

不動産がマンションの場合、財団から放棄後も滞納管理費が生じ続けます。
競落人は、財団放棄後の滞納管理費を含む一切の滞納管理費の支払義務を承継し(区分所有法8条)、これを支払うことになります。

滞納管理費を支払った競落人が破産者(自然人)に求償できるか、という点について判断した東京高裁平成23年11月16日判決(上告審)が、判例時報2135号に掲載されていました。

  1. 破産手続開始決定前の滞納管理費についての求償権は、破産債権なので免責求償できない
  2. 破産手続開始決定後財団放棄までの滞納管理費についての求償権は、破産法148条1項2号の財団債権であり、破産者は弁済義務を負わない。求償できない
  3. 財団放棄後の滞納管理費についての求償権は、破産者が責任を負わないとする法律上の根拠がない。また、信義則違反または権利濫用にもあたらない。求償できる

1,2は当然として、3は厳しいですね。

早期に売却すればそれだけ管理費の負担は減ります。
しかし、管財人が売却できずに競売になっている物件を早期売却することは容易ではないでしょう。
また、そもそもこの事案がそうであったように、破産者は、任意売却に協力するために退去していることがほとんどで、実際にマンションを利用しているわけではありません。
にもかかわらず、管理費だけは負担し続けなければならなくなります。
せっかく免責を得てリフレッシュスタートを切ったというのに、不要な支出を強いられるといえます。

判決も指摘するように、立法による解決が必要なところかもしれません。
同様の問題は、放棄された不動産の固定資産税についても指摘することができます。

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